旅行

林 武史 石の記憶、泥の声

岐阜県の美濃加茂市民ミュージアムで開催されている林武史展を見に行ってきました。2004年に制作された「水田」という作品が館内に再現されていました。文字通り水田です。きっと真冬の枯れ果てた田んぼでしょう。(パンフレット画像3枚©美濃加茂市民ミュージアム)

自分が小さいころ、毎年お正月は母の実家に行きました。いとこたちと近くの田んぼに行き、鬼ごっこをしたり凧あげをしました。さえぎるもののない広々とした田んぼを自由自在に走り回る気持ちよさ、ほほを切るような冬の冷たい風などの感覚がよみがえってきます。自分が住んでいるところの近くには田んぼがなかったので、新鮮な気持ちで田んぼに足を踏み入れたものでした。

作家の林さんはどんな思いでこの「水田」の泥をこねて広げたのでしょうか。現代美術にあまり興味のない人がよく「わけがわからない」といいます。わたしにもこの作品はわけがわかりませんが、この作品からいろいろな感覚を思い起こすことができただけで十分かなとも思います。

屋外にもワークショップで制作した「月に吠える」があるというので見に行ってみましたが、庭園をぐるぐる回っても見つかりません。ひょっとしたらこれかも?という泥を積み上げた小山がその作品でした。よく見ると木が突き立ててあったり、坂道みたいなものが作ってあったりして子どもの泥遊びの跡みたいです。「この階段をとことこ登っていくとそっちの穴につながるんだよ」とか言いながら自分もよく泥で遊びました。楽しそうです。

アトリエ棟があり、その裏庭のような場所にも石の作品が展示されていました。「舞の所作」は黒花崗岩という石の中でもかなり硬い石を使って作られています。作家はほとんど具象的な要素を入れない作風ですが、いくつかの細い石の並びと彫りの関わり方で、逆に柔らかい軽やかな舞のイメージが感じられます。(アイキャッチ画像)

自分は石や鉄といった物質感を強く打ち出した現代美術がわりと好きですが、ただ美術館に見に行くだけで、言葉や文にしたことがありませんでした。ブログを書くために初めて言葉にしてみると、自分が感じていることが改めて発見できたような感じでした。評論家でもないのに気取って文を書くのは少し恥ずかしいですが、たまにはいいなと思いました。

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