旅行

呉の立ち位置 ~広島その4~

呉の大和ミュージアムへ行ってきました。館内には精巧につくられた戦艦大和がありますが、十分の一といってもかなりの大きさです。以前見たアルキメデスの大戦という映画では、数学の天才的な才能をもった青年が、戦争勃発を食い止めるために戦艦の設計をするという話でした。でもストーリーは、軍人は最新鋭の壮大な戦艦に乗ると、それを抑止力として留めきれず、結局それを実戦で使ってみたくなってしまうという矛盾した展開になっていきました。

30年ほど前湾岸戦争が勃発し、当時バーレーンに住んでいた私の友達は、急きょ帰国し戦火が収まるまで戻ることができませんでした。バーレーンは戦争当事国ではありませんでしたが、小さな国なのでバーレーンを挟んで両側の国がミサイルを発射し、上空をミサイルや空爆に向かう爆撃機が行き来したりするのだそうです。ミサイルはたまにバーレーンに落下するらしく、たまったものではないと言っていました。自分の親世代以外に戦争を経験した人はいなかったので、第二次大戦後も世界中のどこかで戦火が収まったことがない事実を生々しく感じたものでした。

本当かどうかは分かりませんが戦争のためのいろいろな兵器は、常に開発され生産され続けていて、在庫がたまってきたミサイルなどは消費期限があるので処分しなければいけない。それを処分するためと、開発した兵器を装備した国はそれを消費したくなってくるという事情が、戦争を引き起こした大きな要因の一つだそうです。

複雑な思いを持ちながら展示資料を見て、呉が造船の町として発展していく様子を知ることができました。映像資料なども豊富で、丁寧に見ていたらかなりの時間がかかり、内容も重いので疲れ切ってしまいました。隣のうみくじら博物館へ行くのをやめてご飯を食べることにしました。

呉ハイカラ食堂は内装が潜水艦風の鉄パイプや保護ワイヤーのついた蛍光灯などで演出されていて、潜水艦「そうりゅう」のテッパンカレーが名物です。

アニメ映画「この世界の片隅に」が呉を舞台にしていたので、近年はこの関連のスポットを訪ねる観光客も多いようです。私も、主人公のすずが村を歩いていた場面の背景に描かれていた印象的な三ツ倉(みつくら)に行ってみました。呉駅からバスで10分くらいのところです。ガイドブックには載っていないし、住宅街の家やアパートに挟まれて立っているので、グーグルマップに正確な住所を登録しないとたどり着けません。

切妻屋根の三角が三つ連なった裏面は、土壁がむき出しになっていていい味わいを出しています。表に回ると白壁となまこ壁に塗ってあり、中央が入り口になっていて、この三つの建物はつながっているようです。ひょっとして三ツ倉を眺めながらコーヒーが飲めるカフェでもあるかもと思いましたが、全く普通の町並みでその方がいいのかもしれません。

呉からは、広島に落ちた原爆のきのこ雲がモクモクと立ち上っていく様が間近に見えて、映画と同じようにたくさんの人々が広島にいた人たちを助けようと広島に向かったそうです。当時は放射線についての知識を持たない人が大半だったので、多くの人が広島に行ったのかもしれません。けれども、現代でもたとえ被爆の可能性が高いと分かっていても、大切な人がその場で助けを待っているかもしれないと思うと、そこへ飛び込んでいく人はいるのではないでしょうか。

この映画がなければ、呉は訪れることがなかったかもしれません。呉の立ち位置が平和への思いを強める方にいってくれればいいなと思います。

 

 

 

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