毎朝散歩する道沿いに、市の文化財で郷土資料館になっている建築があります。昔の有名な建築家の設計で、近代建築特有の装飾に重厚感があり、自分にとっても町の自慢の一つです。この辺りは、小さな城下町でもあったので、自分が高校生だった頃までは、一本路地に入ると宿場町の風情のある街並みが続き、はんぺん屋やどじょう屋などがありました。この辺りには、徳川家康所縁の史跡や新選組とともに活躍した幕末の志士の石碑などたくさんの見どころがあるので、沿線の鉄道会社は史跡めぐりウォーキングのイベントを度々開催し、土日はウォーキングを楽しむ人でいっぱいです。
昨年、通学路沿いの塀が倒れて小学生の女の子が犠牲になる事故がありました。郷土資料館の隣は小学校なので、大丈夫なのかなと思っていましたが、6月頃からこの資料館の塀も補強工事が始まりました。敷地内の木を切り倒し、重機を入れて大掛かりな土木工事を3か月ほど行っていたので、当然以前のようなレンガ塀になると思っていたら駐車場によく使われる金網の塀になっていました。郷土資料館の門の右側とその向こうの小学校の敷地はずっとレンガの重厚な塀が続いているのに、門の左側は金網なんて品格がまったく失われて本当にがっかりしました。
建物は文化財でも塀は文化財として登録されていなかったのでしょう。いくら安全性を重視するといっても、東京駅でさえ平成の大修理で明治初期のレンガ建築を保存したのだから、安全な施工方法はあったはずです。予算がないというなら、近くの公園にお城を建てる計画をずらして工面すべきです。本年度の予算内でしかできないというのは、お役所仕事すぎます。近年の町興しで成功している例を市の職員は知らないのでしょうか。昭和バブルのように、巨額の予算をお城一点に投入するだけで町が活性化するはずがありません。町全体に眠るお宝を掘り起こしてそれを点々と繋ぎ、町歩きしててみたい素敵な見どころいっぱいになる計画を立てるべきです。
この市は結構お金があるので町の魅力をわざわざ掘り起こさなくても困らないのかもしれませんが、近隣の町からはうらやましがられるようなネタはたくさんあるのにもったいないなと思います。令和はコロナによって大きく変わっていきそうです。箱ものをつくるよりもこの町を輝かせる方法をプロデュースすることにお金を使う感性をもって新しい時代を作っていってほしいなあと思います。