いろいろな美術館を訪れてきましたが、今回の河井寛次郎記念館はとても楽しめて見に来たかいがありました。
ここは実際に河井寛次郎が住んでいた住居であり、敷地の奥のほうには登り窯まであります。
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狭い道に家々が立て込んでいる現在の京都の町では、登り窯などで焼き物を焼くのは無理でしょうが、昔はできたのでしょう。
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迷路のように入り組んだ構造で、小さいけれどいろいろな部屋があります。
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どの部屋の調度もみな河井寛次郎が作ったもの、作らせたものや選び抜いたものばかりで、重厚感と独自な造形感覚で仕上げられ、落ち着いた空間をつくりだしています。
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そしてどれも民芸運動の中から生まれてきた用の美を伴う力強さが宿っています。
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彼の生活すべてが民芸運動の理念に基づいていて圧巻です。
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こういったつくりの家はだいたいとても底冷えがするものです。自分は昔の家のそういう面が苦手なのですが、とても寒い日に訪れたにもかかわらず、暖房がしっかり効いていて快適に見学できました。
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昔からこの記念館を訪れようと、何度もチャレンジしました。その度になぜかいつも改修中だったり臨時休業だったりして実現しませんでしたが、今回ようやくかないました。
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民芸的なものは、古臭くてシャープな現代性が感じられないので、どちらかといえば嫌いな分野でした。けれども最近なんとなく民芸の味わいや良さをしみじみと感じることができるようになってきました。この記念館の良さを本当に味わうことができるまで、何か不思議な力で止められていたような気がします。
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こういう家に住みたいとまでは思いませんが、小さなコーナーでもいいので、暮らしの中に民芸を取り入れたものに囲まれてみたいなと思っています。