手抜き生活

築百年の古民家

わが家の隣に建っている家は、戦前からある家を夫のおばあさん夫婦が買い取って住んだ家でした。

義母が亡くなった数年後、空き家となった家の耐震補強をしたのが7,8年前でした。リフォーム会社の方に「今時外壁に檜皮葺(ひわだぶき)が残っている家なんてないですよ。」と言われました。何十年も前に窓はサッシに取り換えられ、家の表面はトタン板などで覆われていましたが、隣家と接する家の裏面はずっといじってなかったのです。

リフォーム時に一階部分はきれいに改装したので、子どもたちが友達を呼んで集まったりする空間ができて便利でした。

長男も、高校の頃から友達をたくさん集めてはこの家でゲームをやったりバーベキューをしたり楽しんでいました。その仲間の中に彼女がおり、今年26歳にもなるので結婚もそろそろかなと思っていました。「どうするつもりなの。そろそろ結婚を考えたらどう。半年くらい前には両家の顔合わせ位しないと。」と時々声を掛けていました。

すると、4月中旬頃に「ゴールデンウイークに結婚する。」と言い出しました。「あと二週間くらいしかないのに、ふざけたこと言ってるよね。」と家族で笑っていました。

いつの間にか何事もないままGWは過ぎ去り、次は「お盆までに一緒に住む。」と言うのです。その頃から「隣のおばあちゃんの家を改築して使う。」と言い始めたので、これは大変なことだなあと思いました。

古い家である上に何十年もの間ろくに掃除もしたことがなく、物置状態だった部屋で寝起きできるようにするのは、相当きれいにしないといけません。「どうやるんだ。どうするんだ。」と言いながら、やがてお盆も過ぎました。

10月に入り、今度は「11月3日が二人の記念日だから、この日に入籍する。」と言い出しました。さすがにこれ以上伸ばすとオオカミ少年呼ばわりされるだろうと思っていましたが、多少涼しくなってきたこともあり、皆で手伝って物の片付けや作業や材料の準備に取り掛かり始めました。

急きょ決まった両家の顔合わせの食事会も10月後半にようやく済ませ、最大の難関である数本の箪笥を家から出す作業に入りました。古民家なので、踏板幅が現代の三分の二ほどしかない狭い階段しかありません。ここから出すことはできないので、窓を外して吊り下げて降ろすか、家の中で分解して窓から放り落とすかのどちらかしか方法がありません。

まだまだ使える立派な箪笥でしたが、何十年もの間使われてきたし、息子たちの趣味に合わない古臭さがあるので、壊して廃棄することにしました。

義母は服を買うのが趣味で、普段はボロボロの作業服しか着なかったのですが、半年に一回くらいしか行かないお出かけのために、しょっちゅうデパートへ出かけては高級ブランドのスーツなどを買っていました。1,2回しか着ないスーツがどんどん増えていき、それを入れるための箪笥もどんどん増えて、結局この家には箪笥が10竿以上もありました。それでも以前6竿ほど処分したので、義母たちは家中箪笥に囲まれた部屋の中で、でかろうじて残ったスペースで生活していたような感じです。

一応5竿だけ残して、ふすまも畳も捨てて物のない部屋が現れると、驚くほどの広さでした。これで後は壁にペンキを塗り、床を板張りにすれば新居の完成です。

ここでは、一番大変だった箪笥の処分について書いただけですが、築100年もの家がどれほど汚れて埃だらけなのかとか、数年間夫のコレクションを溜めておく物置状態だった場所の物を、どう動かして処分していくかなど、振り返っても相当大変な作業でした。

空き家になった古民家を、内部の物が入ったまま解体作業業者に頼む人が多いですが、そういう人たちの気持ちがよく分かります。途中何度も、こんなに大変なら数百万かかっても家ごと壊した方がいいのではないかと思いました。

けれども、われわれから見たらガラクタ同然の夫の膨大なコレクションは、どんなに小さなものでも捨てるなと言われていましたし、二人の息子たちもこの新たな改築作業を結構楽しんでいたので、業者に頼まず自分たちで改築していく方法を選んだわけです。そんな様子を無視して手伝わないわけにもいかないので、微力ながら自分もせっせと手を動かしてきました。

ようやく、片付けが済んでこれからが楽しい部屋づくりの段階です。先が見えてきたことで息子のやる気も増して、古臭いタイル壁のお風呂の改築までやると言い出しています。

ここからは、年内入居を目指してどんどん作業が進んでいきそうなので、自分もワクワクしてきました。ボロ家でも、自分で作った部屋ならきっと愛着も湧くでしょう。後は、お嫁に来てくれる彼女が気に入ってくれるのを願うばかりです。

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