手抜き生活

着付け教室:夏の絽・単衣とお花見第八弾:杜若と花菖蒲

着付け教室五月の回は、夏に着る絽(ろ)や裏地(?)のない単衣(ひとえ)の着物について勉強しました。勉強と言うよりも、暑いときはこんなことに注意するといいとか、こんな組み合わせや楽しみ方ができるといった知識などを、実物を見せてもらいながら教えてもらうのです。

全然知らなかった世界なので、以前着物好きの母が言っていたことはこのことだったんだなどと、腑に落ちることも多々あって、聞きたいことがどんどん出てきて話が広がります。

今回も着物を着てみんなでお出かけしようという計画でしたが、天気予報は雨。本当は自分の母の単衣の着物を着るつもりでしたが、教室にある着物を借りて出かけることにしました。雨に濡れても、後で洗濯機で洗えるものが揃えてあるそうで、ありがたいことです。

昭和三十年代頃までは、日本人は日常着として着物を着ている人たちがまだかなりいました。自分の母の若いころの写真も、着物と洋服が半々くらいで写っています。けれども現在の私たちの頭は、着物は貴重品であり、日常的に使用するなんてとんでもないことだと思い込んでいます。

これは、高度経済成長とともに着物離れが進んでいった世の中で、日本の呉服屋さんが生き残っていくための戦略だったのだそうです。そうして、特別貴重な素材を使って手間のかかった技法で織られた反物だから、数十万円もしても当然なのだとか、冠婚葬祭には高価な格の高い着物を着なければならないなどというしきたりなどが、日本人の常識として植え付けられてしまったのです。

庶民が着ていた地味で丈夫な木綿の着物の日常着は捨てられ、軽くて華やかで洗濯しやすい洋服に変わりました。そして、経済的に豊かになるとともに、昔から貴重で高価だった絹の着物が外出着として求められるようになったのです。

そういった現代の着物観が出来上がった背景なども、先生から教えられて知りました。それで、自分の母がめったに着ない大島紬や、高価で複雑な織の帯をローンを組んでまで手に入れたことを、繰り返し自慢していた訳が分かりました。

母にとって、自分が嫁入りの時に喪服一つ持たせてもらえなかった貧乏人だったことが、耐え難い現実でした。大島紬を手に入れることは、憧れや夢を実現することだったのです。

そして自分の夢をかなえた後は、そういったことにあまり興味を持たない世代に育った私や妹に対しても、嫁入りの時はどこにいっても恥ずかしくないような、立派な着物をそろえておこうとしたのでした。

実家に行くと、箪笥の中に一度も手を通したことのないような着物がぎっしり詰まっています。以前はばかばかしいし、なんという金の無駄遣いだろうくらいにしか思えませんでした。でも、母を含め戦中・戦後数年の貧しい時代に青春時代を過ごした女性は、程度の差はあれ、みんな同じ行動をとったのだろうと気付くと、母の想いや価値観を馬鹿にするのも気の毒だなとも思います。

いろいろなことを思い出したり、話したりしながら着付けを終えると、結局今日も予定時刻ギリギリでランチに出発です。今回は以前ブログにも書いた39カフェの二階席を予約して、迫力のある天井とサンドイッチランチを楽しんできました。

その後すぐ近くの知立神社で「かきつばた・花しょうぶ祭り」を見に行こうという事で、知立神社を訪れました。杜若(かきつばた)のコーナーと花菖蒲(はなしょうぶ)のコーナーに分かれていて、五分咲きくらいかなという感じでした。花菖蒲の方が品種改良されているので、大きく色合いが豊富で写真映えはしますが、杜若の濃い紫も楚々とした風合いがいいものです。

境内にみえたおばあさんが、私たち和装の三人組をしげしげと眺めながら「素敵だねえ。」と褒めてくれたのでとても嬉しくなりました。

洋服でどんなにおしゃれして出かけても、おばさんグループにすてきだねえと言ってくれる人はいません。でも、着物を着ただけで「素敵」と言ってもらえるので、大変でも着物を着たかいがあります。

今日のコーディネートのポイントは、何といっても雨の日ならではの和傘です。これをさしただけで、パッと和の世界が広がるし、顔立もくっきりと引き立ちます。

先生は、形式にとらわれずいろいろな安い材料を使って和装を工夫します。クリスマスの頃は、ニトリで買った500円のジャガード織のトナカイやサンタ模様のテーブルランナーで帯を作って使っていました。

今回はシマムラで買った夏用レースのれんを切って繋いだ帯が涼し気です。私は、骨董市で買ったというレトロ柄の薄紫の単衣の着物を借りました。帯留めに百均で買った魚のバレッタをはめて、帯締めをうねらせて波を作ってくれました。

こういった面白さは、洋服以上にストーリー性や季節を感じさせるモチーフがふんだんに盛り込めて、楽しさ倍増です。

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