友達が着付け教室の先生なので、昨年の七月から月一度くらいの割合で着付けを習っています。月一度だと、着付け知識ゼロの自分には、前回のことをすっかり忘れて毎回リセットと言う感じでしたが、それでもわずかながら聞き覚えのある言葉や見覚えのある動作が分かってきました。
大事なポイントは先生が抑えてくれるので、初心者でも仕上がりはピシッと着付けが決まります。今回は大島紬にチャレンジしてみました。
私の母は着物が好きで、若いころは貧乏でまともな着物一つ買ってもらえなかったので、少し着物が買えるゆとりができた頃に「いつかは大島紬」と憧れてきた着物を手に入れたのでした。「泥大島は特別で、すごく貴重な物なんだよ。」と嬉しそうに語っていた母の言葉が印象的でした。
そんな着物好きな母も、自分が覚えている限り、いろいろな行事やお出かけに着物を着ていた覚えがほとんどありません。憧れていた着物を一つ一つ手に入れて行く喜びはあったのでしょうが、分割払いで少しずつ着物代を呉服屋さんに払いながら、やっと手に入れた着物を大切にしたいという気持ちが強かったのでしょう。それに、本人は自分では着付けができないので、美容院を予約するなど、着るにはいろいろと面倒という気持ちがあったのでしょう。
「大島紬はどんなときに着るものなんですか?」と先生に尋ねると、大島紬はものすごく手のかかる織物で、普通のレベルのものでも何十万円もする高価な着物であること。高価ではあるけれど、着物としての格は低いので、冠婚葬祭などには使えず、ちょっとしたお出かけや観劇などに着ていくものであること。ご自分も大島紬を持っていて普段使いにしたいけれど、高価な着物であることを考えると、そう簡単に使えなくてずっとしまい込んであったという話をしてくれました。
けれども、自分たちの年を考えると、しまい込んでばかりではもったいないから、どんどん使っていこうと思い始めているそうです。また、先生のお知り合いの方が「大島紬コンテスト」のようなことをインスタ上で企画していて、先生はそのアンバサダーをしているそうです。アンバサダーは顔出しでコンテストに参加しなければいけないけれど、一般の参加者は顔を隠してでもいいそうなので、もう一人の友達とそれなら参加してみようかという事になりました。
お稽古当日、みんなで着物を取り出すと、先生も友達も深い茶色の生地に、黒糸で柄が織り込まれています。自分だけは黒と白のマス目模様なので、ひょっとして大島紬と思い込んでいたけれど、これは全然違うものなのかなと思いました。でも、泥大島は泥で黒く染めてある糸なので、こういう大島もあるという事でした。着物に大島紬と書いてあるわけではないので、本当の所は分かりませんが、反物の端に印があるそうなので、今度調べてみようと思います。
コロナ蔓防も一応解除されて初のお稽古だし、春を迎えていい気候になってきたので、今回は着付けの後、撮影がてら遊びに行こうという事になりました。
まずは牡丹が美しい慈眼寺という知立のお寺へ行きました。一昨日までの雨で、すこし花びらがやつれているものもありましたが、豪華に大きな花を咲かせています。
いざ撮影となると、牡丹は背丈が低いので、我々がしゃがみこんで人と花が入るように取らないといけません。三人で代わる代わるポーズをとってシャッターを押していたのですが、結局一番いいなと思う写真は、立派なカメラを抱えてボタンを取に来ててみえた男性に頼んで取ってもらった写真でした。普段取りなれてみえる方は、やはり簡単に撮ったようでも上手です。牡丹鑑賞のあとは、近くの甘味処「萬屋」で葛切りやあんみつを頂いて、一日着物を楽しむ着物日和となりました。
今回は、紐がきつくて苦しくなることもなく、ずっと楽に過ごせたので、俄然着物でのお出かけが楽しみになってきました。この日の夕方、先生の作った動画を見ながら着付けの復讐までやってしまいました。次回はランチを食べに行こうと目論んでいます。