アート

地中美術館 at 直島2022

10年ぶりに瀬戸内海の直島を訪れました。ベネッセが建築家の安藤忠雄の設計でつくった地中美術館にも行ってみました。

ここは、エントランスまでのほんの少ししか写真が許可されないので、画像はあまりないのですが、パンフレットの写真の様に上空から見ると、直島の丘の中に埋まっている美術館です。

所々、三角形や方形の穴が開いています。多分正方形の穴が、エントランスになっているところではないかなと思います。

細長い通路は、実は両側の壁が微妙に傾いていて、10メートルくらいの長さですが、なんだか自分も傾いてよろけてしまいそうな感じでした。

ほとんどが、聳え立つ美しいコンクリート打ち放しの壁に囲まれた空間でできた美術館で、上方に穴が開いているだけの部屋もありました。後でわかりましたが、それはジェームズ・タレルの作品なのでした。彼の作品は蛍光色の光の壁だと思って近づくと、実はそれは向こう側に広がっている部屋の入口になっていたりして、建築の一部なのか作品なのかがよくわからなかったりします。

彼の作品は、それだけだと思っていましたが、後でパンフレットを見ると、実はただの四角い空間だと思っていた場所も作品で、美術館の中に3つも作品があったのでした。直島の南寺という場所にも彼の作品があり、これも不思議な経験のできる作品でした。

一番圧倒されたのは、ウォルターデマリアの作品です。作品室に入るとそれは部屋そのものが作品になっていて、壮大な神殿のようです。コンクリートの階段の中央踊り場には2メートル以上の球形のピカピカに磨かれた石が置いてあり、四方の壁には金箔が貼られた木製の柱が三本ずつ十数か所に並んで立っています。

GANTZという映画化されたマンガがありましたが、その不気味な静けさが醸し出す圧迫感が、この作品によく似ているなと思います。他に例えようのない空間で、階段の一番上まで登り、再び降りてくるまでの経験を味わうための装置のようです。

少しうれしかったのは、ほとんどの人が気づかず通り過ぎていく三本の金の柱は、よく見ると三角柱だったり四角柱だったりします。どの壁面も三本ずつで金色であることに意識を奪われて、単調に見える同じようなものを人は注意深く観察したりしないという事が作家の言いたいことの一つなのではないかと思います。

これとよく似た彼女の作品が、ベネッセハウスミュージアムの広大な庭に点在する作品の中にありました。ただし、ミュージアムの中からは全く存在の気配すらなく、わざわざ外に出て庭をグルグル回っている人にだけ発見できる、コンクリートの壁に囲まれているその空間もまた地中に埋まった状態で設置されいるのです。

彼女の最もインパクトの強い作品は、アメリカの何もない広大な砂漠化した土地に、数十本の避雷針を立てたものです。そういった土地は乾燥して雷が発生しやすいので、その大地と空との間に雷が落ちる瞬間が作品だというのです。避雷針に雷が落ちている写真が載っている作品集は、入り口のミュージアムショップに置いてありました。

この美術館で最も有名なのはモネの睡蓮の池を描いた作品です。モネの作品は5点もあり、最も大きくて長いものは、2メートル×3メートルです。これらの作品も独特の展示方法です。展示室に入る前にスリッパに履き替えて、真っ白な壁に真っ白な床の空間に入っていきます。その床には、約2センチ×2センチくらいの白い大理石の立方体の角を丸く削り落としたものがびっしり敷き詰められています。足元にポコポコとした不思議な感触を感じながら作品を見ていると、作品だけでなく、モネの池の中に囲まれて漂っている感じがしてきます。

いろいろな芸術祭やベネッセの関連の作品展示室の多くは、靴を脱いで入らないといけない場所ばかりです。今回の瀬戸内芸術祭での作品鑑賞では、数十回靴を脱いで作品に対峙してきました。一つの作品を見る度にいちいち靴を脱いでまた履き、次の作品に向かわねばなりません。そのせいもあって、2泊3日の後半には膝が痛くて歩けない位でしたが、靴を脱いで床の感触を感じながら作品を味わう価値を感じたのは、唯一このモネの部屋だけです。

ちなみに、3年前ベネツィアビエンナーレに行った時は、どんな展示場に行っても靴を脱いで作品を見る場所など一つもありませんでした。もちろん、日本の芸術祭では民家を展示場にする場合が多く、日本人の風習として、家の中に土足で上がるのはあり得ないことは承知しています。それでも、かなりの改築費をかけて展示場を作った場合が多く、それなら靴で上がるように内部を設計することもできるはずなのに、ほとんど靴を脱いで上がる構造にしています。

更には、新しく作った美術館内でも、わざわざ靴を脱ぐ場所を作って展示室に入る作品がかなりたくさんあるのは、どうしても納得いきません。これも逆に日本文化をありがたがる外国人受けがいいからなのでしょうか。

さんざん文句を書いておきながら、芸術祭巡りは大好きなので、一瞬で脱げて一瞬で履けて、歩きやすい靴を探すのが今後の課題です。

 

 

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