30年ほど前、夫の出張ついでにフランスに行きました。パリでのホテルはこじんまりとした歴史を感じさせる部屋で、小さな窓の鎧戸を開けるとエッフェル塔が見えて「これぞパリのアパルトマン!」といった感じでした。(ひょっとしたら位置的に勘違いがあるかもしれませんが)その真向いも古い建物で、ゴブラン織りのタペストリー「貴婦人と一角獣」が有名なクリュニュー美術館でした。
夫が仕事に行っている間、一人でこの小さな美術館を回ってみました。「貴婦人と一角獣」は背景が赤色で周囲には緑の植物が織り込まれていて結構色鮮やかなのですが、織物なので落ち着いた温かみを感じさせます。ちょっと薄暗い石造りの建物の中に溶け込んで、中世にタイムスリップしたような気がしました。
この後訪れたベルギーの街角の店で、偶然この作品の一部を用いたクッションカバーを見つけて飛びつくように買いました。確かウサギと鹿の絵柄だったと思いますが、長年愛用して家の犬がかじったり子どもが汚したりして絵が分からないほどぼろになったので、捨ててしまいました。
でも、一度心ひかれたものとは必ずどこかで引き寄せられて出会うものなのか、軽井沢に旅行に行ったとき、また偶然通りかかった店で同じゴブラン織りに出会うことができました。その頃は、最初のゴブラン織りが健在だったので、美しい花の柄を選びました。数年に一度軽井沢を訪れるたびに、少しずつゴブラン織りクッションが増えていきます。