10月の初めころ河川敷の水道橋のアーチ上は雁がびっしりと止まっていて、時折一斉に飛び立って、雁行形をなして彼方に飛んでいきます。その姿を毎日見ていると二つの物語を思い浮かべます。
「残雪」と狩人たちが名付けた伝説の雁の物語がありました。頭部に白い部分があるためそう呼ばれた雁は群れのリーダーで、賢いので危険をすぐに察知して群れを引き連れて逃げて去って行ってしまいます。ベテラン狩人の老人はなかなか仕留めることができず、いつか仕留めてやろうと機会を狙っています。そしてついにチャンスをつかみ、残雪めがけて引き金を引こうとしたとき…。「老人と海」にも通じるような自然と人との闘いは、何かを超越した感動を与えてくれます。
もう一つの物語は「魔女の宅急便」です。魔女の女の子がほうきに乗って雁の群れと一緒に空を気持ちよく飛んでいるシーンは、だれもがあんな風に空を飛んでみたいと思わせます。ところが、その直後突風に吹き飛ばされてしまいます。雁の群れはその突風をを難なくかわして飛び去って行きますが、女の子はとんでもないアクシデントに巻き込まれます…。子どもたちと何度もビデオで見たアニメですが、初めて自分の仕事を見つけて自立しようとする女の子の純粋さがいつみても爽やかな気持ちにさせてくれます。
2週間ほどで雁の群れはどこかへ飛び去って行きました。雁が止まっていた水道橋の真下の草は糞で真っ白になっています。おまけに川の魚を餌にしているので、この辺りは生臭くなってしまいます。以前近隣の市にある水族館に行ったとき、水辺の魚や鳥、周辺の環境などを再現したコーナーがあり、その匂いをかぐこともできる仕掛けがありましたが、その匂いが魚の生臭いにおいでした。それまでは、単純に川に流されたごみによる環境汚染だと思っていましたが、これも自然のサイクルなのだと驚いた覚えがあります。(以前このように書きましたが、雁は落穂などを食べる草食なのだそうです。生臭さの犯人は川鵜かもしれません)
朝夕の冷え込みは10度くらいになってきて、今川面を泳いでいるのは鴨の群れだけです。鴨たちはいつ、どこへ飛んでいくのかなと思いながら堤防を歩いています。